①甲状腺ホルモンの過剰合成による代表的なものはバセドウ病です。
バセドウ病は自己免疫疾患であり、甲状腺細胞に自己抗体が結合し刺激することにより甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、その結果動悸、手の震え、発汗の増大、体重減少等が認められます。
甲状腺腫大や眼球突出が著明となることもありますが、目立たないことも少なくありません。
もし自分がバセドウ病ではないかと疑った場合、両手を真っ直ぐに伸ばしてみてブルブル震えるようであれば(手指振戦)、バセドウ病である可能性は高いものと思われます。
確定診断は本来なら甲状腺シンチですが、被爆するため甲状腺ホルモン、甲状腺抗体、甲状腺エコー、身体所見等で総合的に診断します。
【治療法】
治療法は薬物治療、放射線治療、手術治療等がありますが、まずは薬物治療となります。
抗甲状腺薬にはメルカゾール、プロパジール(チウラジール)の2種類がありますが、第一選択薬はメルカゾールです。
これはプロパジール(チウラジール)にくらべて効果が確実であることが主な原因ですが、催奇形性が報告されているため妊娠を考えられている女性にはプロパジール(チウラジール)が第一選択薬となります。
妊娠初期には通常量の抗甲状腺薬が必要ですが、妊娠中期になるとバセドウ病が安定するため薬が減量となり、後期には抗甲状腺薬が不要となることが少なくありません。
これは妊娠の進行により副腎皮質ステロイドホルモンが増大することによるものと考えられています。
甲状腺腫大が著明な方に多いですが、抗甲状腺薬を3錠/日内服しても、血中甲状腺ホルモンが高い方には当院ではヨードを併用していただきます。
これは抗甲状腺薬特にメルカゾールの副作用が用量依存性に上昇するためです。
逆にヨードは副作用が殆どなく初期には著効するため重宝します。
ただ効果に永続性はなく、最短2週間程度で効果が無くなる可能性がありますので(エスケープ現象)注意しながら使用しなければなりません。
これらの薬剤で副作用が出現した場合、あるいは甲状腺ホルモンが正常化しない場合、放射線治療あるいは手術治療となります。
手術治療の方が確実なので、当院では手術療法をお薦めしたいと考えております。