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糖尿病内科

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糖尿病内科

糖尿病はその患者数が爆発的に増加した疾患です。世界では2017年に4億人を超え、日本でも糖尿病が疑われる成人の推計が2016年にとうとう1000万人となってしまいました。

糖尿病の歴史

昔糖尿病を診断するのは困難でしたが、現在ほど糖尿病患者がいたとは思えません。

日本史で最初に明らかな糖尿病患者として登場するのは平安時代の藤原道長(966-1028)です。摂関政治を行い権力の頂点に達した人物ですが健康には恵まれず栄花物語に多飲、多尿、視力低下等の記述が認められ、63歳で死亡しています。

藤原道長が糖尿病に罹患した原因は様々考えられます。遺伝的な影響も大きいと考えますがやはり当時では非常に珍しかった過食が大きく関与していることは否定できないでしょう。

現在の人類であるホモサピエンスの歴史は約20万年ですがその殆どが飢餓状態でありました。人類以外の動物もそうですが生き残るには食事を摂取できなくても血糖を上昇させなければ低血糖を起こし意識を消失するしかなかったのです。意識がなくなれば当時はすなわち死を意味しますので、現在生き残っている人類、動物は血糖上昇能力が高くなるよう適応し、進化し、生き残ったものと考えます。つまり現在生き残っている人類、動物は飢餓に適応した体を持っているため血糖上昇能力は高く強い食欲を持っていますが血糖を低下させる能力は低いため飽食により容易に血糖が上昇することになります。

高血糖・糖尿病の発症

人には様々なホルモンが分泌されています。

ホルモンとは体から血中に分泌する薬のことですが殆どが血糖を上昇させるホルモンです。副腎皮質ステロイドホルモン、アドレナリン、ノルアドレナリン、甲状腺ホルモン等です。

それに反して血糖を低下させるホルモンはインスリンのみです。このアンバランスは飢餓状態に適応した結果と言えますが反面、過食、飽食には非常に適応しにくい状態と言えます。

特に肥満状態が持続し過食が持続した状態ですと、当初はインスリン過剰分泌により血糖は正常化しようとしますが、そもそも多勢に無勢なためこの状態が持続するわけはなくやがて膵臓β細胞の疲弊によりインスリン分泌は低下し血糖を正常化できなくなります。

これが糖尿病の発症です。このパターンを示す糖尿病は2型糖尿病と言われ糖尿病の大半を占めます。

まとめると
過食、肥満等によるインスリン抵抗性の増大
→インスリン分泌の増大による血糖正常化
→膵臓β細胞の疲弊のよるインスリン分泌の相対的低下
→高血糖・2型糖尿病の発症となります。

2型があるので1型もあります。1型糖尿病は膵臓β細胞の破壊によっておこります。破壊の程度により重症度は様々です。一見2型糖尿病のような1型糖尿病も存在しますが急激に膵臓β細胞が破壊されてインスリン分泌が消失する型も存在します。劇症1型糖尿病と言われるものでインスリン分泌が0になってしまうため細胞内のブドウ糖(グルコース)が消失してしまい代わりにエネルギー源として脂肪が分解されます。脂肪は通常二酸化炭素と水に分解されますが細胞内のブドウ糖が存在しないためケトン体という物質に分解されます、ケトン体は酸性物質なのでこれが増加すると体内の血液は酸性に傾いてしまいます。(糖尿病性ケトアシドーシス)体内の血液が酸性に傾くと身体中の酵素の働きが著しく低下するため生命の危機となります。症状としては①高血糖症状と②血液が酸性になることによる症状となります。①は全身倦怠感、口渇、多飲、多尿です。多尿は高血糖による高浸透圧利尿によって生じるためこれは飲水の有無にかかわらずおこります。水分を摂取しなくてもおこるため特に目立つのは就眠中の頻尿です。頻尿のため不眠になるほどです。

糖尿病は以下の基準で診断されます。(糖尿病診療ガイドライン2019)

①糖尿病型を 2 回確認する(1 回は必ず血糖値で確認する).
②糖尿病型(血糖値に限る)を 1 回確認+慢性高血糖症状の存在の確認.
③過去に「糖尿病」と診断された証拠がある
糖尿病型とは空腹時≧126mg/dLあるいは随時血糖≧200mg/dLあるいはHbA1c ≧6.5%のことです。
慢性高血糖症状とは糖尿病の典型的症状(口渇,多飲,多尿,体重減少)あるいは糖尿病性網膜症の存在です。
従って初診でも空腹時≧126mg/dL且つHbA1c ≧6.5%あるいは随時血糖≧200mg/dL且つHbA1c ≧6.5%であれば糖尿病の診断となります。HbA1cのHb(ヘモグロビン)は赤血球内に存在するタンパクであり酸素を運搬する働きをしています。このタンパクが血液中のブドウ糖(血糖)と結合している割合がHbA1cです。従って単位は%となっています。Hb(ヘモグロビン)の寿命は90日から120日といわれているためHbA1cは1~2ヶ月の血糖の平均を表します。従ってHbA1cは糖尿病の診断のみならず治療の指標としても有用です。HbA1cが7%以下にコントロールしていれば糖尿病の合併症は出現しませんが8%以上になれば合併症が出現し進行するといわれています。
当院ではHbA1と血糖は約10分で測定できますので迅速に糖尿病の診断と評価を行うことが可能です。

 

食事療法

治療として最も重要なのは食事療法です。

身長170cmであれば1840kcal/日、身長160cmであれば1600kcal/日で炭水化物は50~60%を推奨します。

最近低炭水化物ダイエットが流行していますが、低炭水化物はブドウ糖供給の低下を引き起こし神経細胞にエネルギーを供給することができないため脳機能の低下をひき起こします。

脂肪は脳をはじめとする神経細胞にエネルギーを供給することはできません。低炭水化物による高タンパクは腎臓に負担をかけるため糖尿病腎症を合併している人には全く推奨できません。 高タンパク負荷は腎機能を悪化させます。

インスリン分泌の低下が軽度であれば食事療法だけで血糖コントロール可能です。インスリン分泌の評価は血液検査で可能です。

薬物療法

食事療法ができない或は有効ではない場合には薬物療法となります。

まず投与すべき経口血糖降下薬はインスリン抵抗性改善薬です。インスリン抵抗性を改善することによりインスリン分泌が低下していても血糖を正常化することができます。

代表的な薬剤はメトホルミンです。この薬剤は米国でも第一選択薬に推奨されています。以前は750mg=3錠/日までしか内服できませんでしたが米国で再評価されたため2250mg=9錠/日まで内服できるようにになりました。単独で低血糖を起こすことはなく安価であるため使いやすい薬ですが腎不全、心不全等全身状態の悪い人には使用できません。

その他最近は様々な経口血糖降下薬が発売されていますが、血糖コントロール困難になった場合或は合併症の多い人はインスリンの適応となります。

インスリン開始となりますと、血糖測定の保険が適用となりますので血糖管理が容易となります。

膵臓β細胞が破壊されることによりインスリン分泌が低下し発症する1型糖尿病あるいは食事療法で血糖コントロールできない妊娠糖尿病、糖尿病合併妊娠もインスリンの適応となります。

妊娠中は内服薬でのコントロールはしません。催奇形性の問題もありますが、内服薬は胎盤を通過するので母親の血糖を厳格にコントロールすると胎児に低血糖を引き起こすからです。

合併症について

糖尿病の持続的な高血糖が引き起こす合併症は血管障害です。

糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害は微小血管障害、脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症は大血管障害です。従って糖尿病の合併症を予防することは血管障害を予防することです。

血管障害は糖尿病のみならず、高血圧、高コレステロール血症、更には喫煙によって起こるので、糖尿病合併症を予防するには血糖、血圧、コレステロールのコントロール及び禁煙を実践しなければなりません。

糖尿病のこれらの病態生理を踏まえて最適な治療を選択し、薦めたいと考えております。

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